FAI△はあまり潰れていない三角形を描くフライトになります。テイクオフしたらスタート地点をとり、3つの旋回点(TP:Turn Point)を回り、スタート地点に戻ってフライトをクローズします。フライト距離は3辺の長さの合計になります。
もし好条件が30~40km四方に限られていても、100kmフライトが達成できるので、北関東には最も適している飛び方と言えます。
FAI△フライト達成の基本的なコツは以下の通りです。
○FAI△独特の制約ルール
O&R同様、フライトのクローズが必要です。基本的なやり方は同じですが、2%ルールというのがあるので注意が必要です。
2%ルールとは、スタート時とクローズ時の高度差は、総距離の2%以内でなければならない、というものです。
総距離100kmなら2000m、50kmなら1000m。
予定する総距離によっては、スタート地点を少し低く作っておく工夫が必要です。
クローズ高度のほうが高いのはOK。
また総距離125km以上あれば、この制限は適用されません。
もう一つ、28%ルールというのがあります。これは、最短の辺が総距離の28%以上なければならない、というものです。これによって潰れた三角形のフライトはNGになってしまいます。
28%のイメージが掴みにくいですね。100kmのFAI△は、各辺が28km、28km、44kmでもOKです。
案外潰れててもいいんですね。あまり気にしすぎず、フライトを楽しみましょう。
もし潰れすぎてしまっても、計測ソフトがルールをもとに最大のFAI△を探してくれます。また、潰れた△はフリートライアングルと呼ばれていて、それも価値あるフライトです。各種オンラインコンテストでは得点対象となっています。
○ルート設定の基礎
TPが多く、28%ルールがあるため、O&Rよりもルート検討は重要です。
条件を簡単にするため、時刻による気象条件の変化は少ない場合を考えてみます。
まず三角形の大きさを決めるために、フライト距離の予想を立てます。フライト時間と平均速度をO&Rで書いた方法で計算し、かけ算してフライト距離を計算します。その1/3が一辺の距離になります。
マージンを確保するために、フライト時間を30分短くしておきましょう。
12:00テイクオフ、16:30最終サーマル、平均速度20Km/hなら、4時間で総距離80Km、一辺は30Km弱となります。
一辺の距離が決まったら、フライトルートを決定します。
ここではテイクオフ=スタート地点=三角形の頂点の一つ(第3TP)とします。
この3点は個別に設定して良いのですが、話を単純化するために同一にします。
テイクオフ前なら地図を見ながら以下のようにタスクを設定します。
初めに考えるのはフライトの空域です。
今日の気象で条件の良い空域がどの範囲かを考えます。
たとえば春の八郷なら、茂木・烏山の丘陵地や、宇都宮・真岡の平地が良いことが多いですね。
そこにテイクオフを頂点とした一辺30Kmの三角形をあてはめていきます。
第1レグで降りちゃうと侘しい午後を過ごすことになるので、第1レグは飛びやすいコースを選びます。
上の条件なら、丘陵地でサーマルを探しやすい茂木方向が飛びやすいです。その30Km先で目印になるもの、例えばツインリンクを第1TPとします。これで三角形の一辺ができました。
そこから西方向に飛ぶとして、地図上に正三角形をイメージし第2TPを決めていきます。例えばツインリンクと足尾から約25Km程度の位置に鬼怒大橋があるので、これを第2TPとします。そして第3TPの足尾テイクオフまで戻ってきて、フライトクローズするタスクが出来上がります。
ちょっと難しいと感じたら、初めは地形もサーマルポイントも知っている盆地内で△を描いてみましょう。
加波山ー竜神ー不動峠で約35KmのFAI△となります。
慣れた盆地内でまずは△を飛ぶイメージをつかんでみましょう。
三角が大きくなると、ルートが条件の良い空域からはみ出すことも多くなります。
O&R同様、条件の良い空域内で飛ぶことを重視して、場合によってはショートカットして帰還しましょう。
〇条件や気象を踏まえたルート設定
FAI△は広い範囲を飛ぶので、時間経過を考慮したルート設定が重要になります。
以下、八郷を前提に説明しますので、自分のエリアについて各自考えてみてください。
・平地が上がらない場合
田んぼが湿っているときや、日照の弱い日は、リフトの期待できる北側の丘陵地でルート設定します。
たとえば、足尾―飯田ダムー茂木変電所というるーと(飯田ダムー茂木変電所が近すぎで28%ルールを満たしていませんが…)。
丘陵地はランディングのリスクが高いので、高度が取れないときは無理をしてはいけません。
・北西風の場合
いわゆる足尾マジックのパターンで、宇都宮不連続線ができることがあらます。
真岡や宇都宮で風が弱くなり、特に強風域との境は活発なリフト帯になります。
弱風域の幅が広い場合は、その中で△を描くことができます。
弱風帯の南北にコンバージェンスが形成されるので、その雲を使って足尾―宇都宮ー小山のような平地の△が可能なことがあります。
或いは真岡や宇都宮まで弱風域で飛び、コンバージェンスで茂木へ向かい、最後は強い北風に乗って帰ってくるルートもお薦めです。
弱風域は上空の風向風速や対流高度でできる位置や範囲が変わりますし、時間とともに移動していきます。
特に雲列の変化に注意し、帰還困難になりそうなときは、O&Rに切り替えて帰還を目指しましょう。
・海風が入る場合
常陸太田などの北東方向の空域は海に近づくので、海風の影響を受けやすいルートです。
海風が予想される日であれば、第1レグを北東方向に設定します。
海風侵入の兆候(低い雲の接近、下層の東風、雲列の位置、ステップクラウド、晴天域の広がりなど)を注意深く観察し、決して海風領域に入らないようにします。
海風が近づいてきたら進行方向を西にずらすか、早めに第1TPにしてしまって西に向かいましょう。
海風の前線面は傾きが大きく、高度1000mで前線面を飛んでいるとしたら、地表では数キロ先まで海風が侵入しています。
雲の下でも高度が下がると海風領域になってリフトがなくなります。
逆に海風の進行に合わせて西進できれば、豊富なリフトで快調に進めるでしょう。
文字ばかりだし、ちょっと話がまとまりませんでしたが、参考になりましたでしょうか。
北関東で良く表れる気象パターンはまだいくつかありますが、また別の機会に紹介したいと思います。